| ドッグレッグス大阪興行&アンチテーゼ北島講演会
過激な自己実現 |
| 障害者プロレス「ドッグレッグス」大阪興行、「ドッグレッグス 大阪戦争」は10月26日、リバティーおおさかで行われ、好勝負の連続でした。中でも興行の核となったドッグレッグス対西日本の障害者の全面対決4試合は、お互いに負けられないという意識がモロに出た壮絶な攻防が繰り広げられました。また先立って25日にあったアンチテーゼ北島こと北島行徳さん(32)講演会は、相変わらず司会の大西の不手際が目立ったものの参加者の多くは北島さんのリアリティー溢れる言葉に共感したようです。試合、講演会、参加者の感想をまじえながらリポートしていきます。 |
| (大西 純)
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熱弁する北島行徳さん |
「ボランティアと出会ったのは高校を中退して家でふさぎこんでいた17歳の時でした。誰かに認めてもらえるのが嬉しかったし、自分が救われてた。変な話、ボランティアをしているということで近所の目も変わりました。最初の1年くらいは、それがとても気持ちが良かった。でもそんな居心地良さはすぐに変わってしまった。今で言うデイケアに行ってたんですが、当時は障害者は、みんな心がきれいな人たちと思ってた。僕もボランティアへ行く時は背筋を伸ばして折り目正しくして行ってました。北島さんの読みは当たり、6年後の今、300〜400人のホールを満員にしたり、年に1度は大阪へ遠征して試合をするまでになった。
それが障害者は心がきれいな心の人ばかりじゃないとわかってきた。むしろ健常者よりずっと欲望が強い。手足が思うように動かないとか、言語障害で言いたいことが相手に伝わらないとか、異性と出会う機会が少ないとか、いろんなストレスがたまる分、よけい欲望は強くなる。酒を飲んだら暴れるし、お金を借りたら返さないとかね、ドロドロしたものが渦巻いてるんですよ。性欲は人一倍強いし、表現欲も強い。そんな人たちに、同情や哀れみの気持ちだけで接していいのかという疑問がわいてきました。よく障害者の発表会がありますね、演劇とか歌の。うまくもない、声も聞き取れないのにお決まりのように拍手する。そういうのがイヤだったんですけど、だったら何をやったらいいのかわからず、集まりに出ては文句ばかり言ってました。それで既存のボランティアの在り方に疑問を持った、行き場のない落ちこぼれの障害者と嫌われもののボランティアが集まってドッグレッグができたたんです(1990年)。それで演劇や歌に代わる表現活動は何かと考えたんですが、なかなか見つからなくて普通のボランティア団体と同じような活動をしていました。
ところが、ある時、ボランティアの女の子を、(サンボ)慎太郎と(欲獣マグナム)浪貝が同時に好きになったんです。で、2人から嫌がらせに近いような猛アタックを受けた女の子はノイローゼになって、ドッグレッグスを去ってしまった。それからは慎太郎と浪貝の間で罪のなすり付け合いです。最初は止めてたんですが、いいかげん誰も止めなくなった。すると、それがプロレスの技の掛け合いのようになってたんです。それを見た時に今までのモヤモヤが吹っ飛びましたね。きっと単なる女の子と取り合いのケンカだったら、そんなにひかれなかったと思うんです。2人が闘いの中でたまった欲望とかモヤモヤを爆発させていたから、これだ!と思ったんでしょうね。初試合(91年4月)には5人しかお客さんが来ませんでした。2人は始まる前に帰ったし、もう2人はボランティアセンターの職員だから、実質客は1人ですよ。それでも晴れ晴れした気分でしたね。やっていけると思いました」
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キントーン小林を攻めるアームボム藤原 |
「いろんな障害者問題が解決したら? う〜ん、リングには上がらないんじゃないですかね。障害者も健常者も同じという建前があるけど、障害者にとってはいろんな壁があるのが現実です。リングで脚光を浴びる慎太郎の願いは職場であるゴミ分別工場で認められることであり、結婚することです。浪貝は就職してボランティアをやっていた仲間と初任給で飲みに行ってガク然としました。0が1個違うと…。そんな、いらだちが彼らにプロレスをやらせているんです」参加者の1人が「自己実現ですね」と言うと、北島さんは小刻みにうなずいた。
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エゲツナイ浪貝の表情 |
| ドッグレッグス大阪大会観戦記録 前向きで素晴らしい 匿名希望(36歳、大阪市) 私は10月25日、26日と両方に、参加させていただきました。肢体・視覚障害者の重複の障害を持つ者です。現在、友人をはじめみんなから「病気がなんじゃい」と言われていましたが、あの障害者プロレスを見て、あっ、こんな障害を持っている人が前向きに行動しているんだ、と感動しました。この人たちが出来るのだから僕たちでも、やろうと思えばできるかもと一瞬は思いましたが、当日26日(日)に、試合を見ると何かハンディをもらわんとできへんなぁと思いました。ハンディをもらってもけったくそ悪いし、ハンディなしでは、勝てっこないし、全く、思っていたことと逆さまで、すごくたくさん練習をして何事にも前向きで素晴らしいことだなぁと思いました。 プロレスだけではなく、他の職業も同じことだと思いました。これからも、彼ら彼女らを見習ってい生きて行かねばと思いました。 |
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ドッグレッグス大阪大会観戦記録 サンボ慎太郎、逃げるな! 山脇 信成(のぶしげ=32歳、池田市) 先月、障害者と健常者が対等になって戦うプロレス(ドッグレッグス)を見に行って来ました。私のように脳性マヒの障害者が派手なコスチュームを着てリングにあがり、真剣に戦っている。パンチ、飛び蹴り、絞め技と、技も多種多様。痛そうやなぁ、と思いながらもけっこう面白い。強烈な打撃技が飛び出すたびに観客席が沸く。確かに予想以上の迫力で、入場料の値打ちがある。と、まぁ、ここまでは一般的な意見。 同じような障害を持つ私から見れば、叩かれたり、蹴飛ばされたりという目で見える痛みよりも、頸は大丈夫かなぁ、腰は大丈夫かなぁ、とそちらばかりが大変気になってしまって、一観客のはずの私の頸にいつのまにか凝りがきていました。それだけ試合をする側も見る側も熱中してしまうかも知れないが、身体的には脳性マヒ者が試合をするということはかなり大きなリスクを背負うことになるので、私は遠慮しておきたい。 数試合行われた中で一番楽しみだったのが、障害者対健常者の8人タッグ生き残りマッチだ。途中までは障害者側も健常者側も互角に戦って試合としても営業面の企画としても大変面白かった。しかし、この試合をつぶした男がいる。健常者側のキャプテンのアンチテーゼ北島に敗れた障害者側のキャプテンのサンボ慎太郎という男だ。負けたのは構わない。それまではサンボ慎太郎が一生懸命戦っていたことを観客たちはちゃんと知っている。なのにサンボ慎太郎、君はギブアップした後、慌てて観客席に走って逃げた。試合が決まった後に逃げてどうするねん! 負けた時程、魅せるのがプロレスじゃないか! 輝いてくれ! 障害者側のキャプテンとして…。 |
| 北島さんの本が出る! 「無敵のハンディキャップ」 障害者に生まれてよかった日 ドッグレッグス7年間の激闘をまとめた 愛と狂気のルポルタージュが遂に完成 泣ける! 笑える! 失禁する! 愛と狂気の全15章500枚 北島行徳著 12月7日発売 文藝春秋 1600円 |
1. 鍋のゴングが鳴り響く 2. ドッグレッグス誕生 3. 女子大生を奪い合って 4. 快進撃の始まり 5. 就職とゴムとソープランド 6. 障害者対健常者 7. 墜ちていく浪貝 8. 大阪興行の光と影 9. 荒波を渡る船 10. こんあに強い男なのに 11. 禁断の愛に揺れて 12. 洋子ちゃん 13. それいけ!菓子パンマン 14. 家族 15. 眩しいスポットライトの下で |