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目 次 ]      月刊・お好み書き 1997年5月1日号


No.51

「措置」外し、子供と保育守れるか

 沖縄の米軍基地用地を確保するための駐留軍用地特別措置法(特措法)改正案が衆院を通過した4月11日、もう一つの「措置」をめぐる法律の改正案が、参院で可決された。
 児童福祉法。人間が快く暮らしていく(well-fare)という意味で、だれもが否定できないためか近ごろはあちこちで食い物にされる「福祉」だが、「○○福祉法」と命名される法律の第1号が、制定以来50年ぶりに見直される。
 特措法の「措置」は、国権が私有地の権利を犯す強制使用を認めることで、廃すべき悪法ともいえるが、ここに述べる「措置」は、保育に欠ける児童を市町村が保育所に入所させて保育すること。言葉の響きこそ悪いが、子どもが快く暮らしていくため国・行政が果たさなければならない義務規定であって、守っていかねばならない制度だった。

◆ベタでは問題点見えない◇

 特措法に隠れた法案通過を、新聞に見つけることは難しい。読売は通過「衆院へ」として、政治面に法案名だけ書いた。辛うじて8行の文章にした朝日のベタ記事は「保育料の年齢別一律化や保護者による保育所選定制を盛り込んだ児童福祉法改正案を賛成多数で可決し、衆院に送付した」(ともに4月12日)。
 これでは法案の問題点は見えない。朝日は前日、参院厚生委員会の同法案可決を3段の見出しで報じているが、「改正案では保護者が希望する保育所を選んで申し込めるようになる」としか書いていない。おまけに「全会一致で可決」とあるのは誤報で、共産党は反対していた。
 ここは共産党の機関紙に出てもらうしかない。措置施設から利用施設に変わり市町村の法的義務が後退する、保育料の高値均一化の危険性がある、競争原理の導入は保育サービスが保育料しだいになりかねない――などが党議員の反対討論紹介の形で報じられている(赤旗11日)。
 児童福祉法第24条は、「市町村は…児童の保育に欠けるところがあると認めるときは、それらの児童を保育所に入所させて保育する措置を採らなければならない」と、市町村が「保育に欠ける」と認めた児童は必ず保育所に入所させて保育する義務を定めていた。

◆義務から努力への“改正”◇

 改正案は条文から「措置」の文言を削り、「保護者から申込みがあったときは…保育しなければならない」「申込書の提出を代わって行うことができる」「入所する児童を公正な方法で選考することができる」と改め、すべてを努力義務にするものだ。
 新聞はどう書いたか。各紙、少子高齢化社会に沿った見直し賛成、各論に注文あり、のパターンは同じ。問題は各論である。東京で1万、大阪で8千人といわれる待機児童はどうなるのか、延長保育、保母の配置基準、保育料、そして措置制度は…。
 毎日と朝日はいずれも国会審議に合わせた3月、家庭面の連載で「選択制半数以上が反対」(6〜8日)、「自由な選択夢のまた夢?」(27、28日)と改正の問題点を書いたが、社論となると歯切れはよくない。

◆「歓迎」、現実視野になく◇

 措置から「選べる保育所」への移行については各紙、「利用者中心の考えが採り入れられている」(朝日3月5日社説)など、歓迎・妥当とする。
 しかし、措置制度の下でも、利用者の希望はかなり考慮されてきた現実が視野にない。入所で不都合が起こるのは、ゼロ歳児クラスを始めとした保育所定員の絶対的不足と、決定過程の不透明性ゆえにほかならない。措置制度への責任転嫁は事実に即していないことを、論説記者はどれだけ知っているのか。
 毎日は、質の高い保育の競争を促し「一歩前進」だが、「親の希望をいかに公平・公正に扱うか」「市町村側の徹底的な『情報公開』が絶対の条件」と釘を刺した(1月14日社説)。
 保育料については朝日と毎日が、公費と父母の負担半々との枠組みは変えないという厚生省の説明に、むしろ公費の増額を迫るべきだとした。

◆“政策放棄”と懸念表明も◇

 産経と読売は、公費負担を通常の開所時間内の保育へ重点投入する方向に対し、「特別保育サービスは保育所と利用者の自由契約になり、補助金が打ち切られてしまう」。「政策的に誘導してきた延長保育の補助金を突然打ち切ることは、仕事と育児の両立を支援する最大の政策を放棄するに等しい」(2月9日主張)と懸念を表明した(読売は4月7日社説)。
 最後に、法案に唯一反対した共産党の主張(赤旗3月12日)。「本当に保育の『選択性』を保障するというのなら、子どもの生活圏である小地域に、必要数の保育所を設け、父母の労働や子どもの生活にそった保育条件や環境を整備することです。『措置制度』の廃止ではなく、最低基準の改善、国・地方自治体の公的保障の拡充こそ不可欠」

 最初に保育予算削減ありき、の「改正」であったことを見落としてはならない。

門田 耕作

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